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いいものは生かしながら、新しい家にする部分的リノベーション - 朝日新聞社

Kさんご一家(夫37歳・妻36歳・長男7歳)
東京都港区/築14年/85平米

今回は、メゾネットのコーポラティブハウスを購入してリノベーションしたお宅です。コーポラティブハウスは前に住んでいた人の注文住宅なので、新しく住む人にとっては使い勝手や趣味が合わない部分が出てきます。一方で、設備や仕様などこだわって、いいものを使っている部分があります。そこで、いいものはできるだけ生かすようにし、家全体をKさんご一家の暮らしに合うように再構成をした、部分的リノベーションになりました。

家の間取りは大きく変えなかったことの一つです。1階は広めのリビング・ダイニングとキッチンがあり、階段で地下に降りると、寝室やトイレや浴室などの水周りがあります。ホームパーティーなど人を招くことが好きなKさんご夫婦にとって、1階は人が集うオフィシャル空間、地下はプライベート空間と分けられる間取りは、暮らしに合っていたので生かしました。そして、より使いやすくなるように、元々の寝室を寝室とウォークインクローゼットに再構成するなど、部分的な工夫を施しました。

いいものは生かしながら、新しい家にする部分的リノベーション

洗面室は既存のものを活用しつつ、区画を変えて家事がしやすい空間に

1階のリビング・ダイニングも大きくは変えずに、壁面に収納家具を造作しました。リビング・ダイニングはほぼ正方形で、家具を配置するのが難しいスペース。そこで、テレビ、エアコン、ロボット掃除機、リビング・ダイニングで使う小物などが収納できる、壁いっぱいの収納を作ったのです。この収納は玄関にも続いていて、シューズボックスやコートかけの役割も担っています。1階で使うもののほとんどはここに収納できるので、日常生活でものが散乱することなく、スッキリと暮らすことができます。ホームパーティーのときにも、生活感が出ることがないそうです。

いいものは生かしながら、新しい家にする部分的リノベーション

今回のポイントはL字形にデザインした壁面造作収納

リビング・ダイニングの床は張り替えを希望されましたが、元々あった床暖房は生かしたいとのこと。実は、床暖房は、床を張り替えると壊れる可能性が高いのです。リスクとメリットを説明し、納得されて床を張り替えることにしました。幸いうまくいき、床を張り替えて、床暖房を生かすことができました。生かしたい設備が、リノベーション後に使えるかどうかは、よく確認して進めることをおすすめします。

いいものは生かしながら、新しい家にする部分的リノベーション

メインの玄関を通ると、ギャラリーのような空間

さらに、メゾネットの特徴である階段を生かし、地下にギャラリーのような玄関ホールを作りました。階段をインテリアの一部のように見立て、脇の大きめの壁に照明をやわらかく照らすようにしてアートを飾ることを提案。元々アートに興味があったKさんご夫婦は工事中に旅行されたイギリスで、お気に入りの作品を見つけたよう。家の中に小さなギャラリーがあるような、非日常を味わえる空間です。

元の家のいいものはできるだけ生かして、そこにKさんご夫婦らしさをプラスし、家全体を再構成していく。大がかりな変更はしなくても、住む人らしさが表現できたリノベーションになりました。

Kさんご夫婦に聞く
リノベーションQ&A

1.一番の気に入っている場所はどこですか?

リビング・ダイニングですね。キッチンを含めた広めのワンルームですが、壁面に収納を造作したので、ものが散らかることはなく、広々と使えます。キッチンにも同じ素材、色の扉つきの収納を作ってもらいました。作業中は扉を開けますが、扉を閉めると冷蔵庫まで収納できるスッキリした見た目になります。生活感のあるものが扉の中にしまえるので、リラックスできる空間になっています。

いいものは生かしながら、新しい家にする部分的リノベーション

キッチン背面収納では、モノのアドレスを決めながら計画

2.リノベーションで一番大切にしたことはなんですか?
 
家事の時間短縮を目指しました。洗濯はなるべく移動せずに作業できるように動線を考えたり、洗浄力が高く容量の大きな食洗機を導入したりしました。

3.リノベーションのプロセスで大変なことはありましたか?

依頼から完成までのスケジュールが厳しかったので、短い間に様々なことを決めるのは大変でした。でも、これは、私たちよりもブルースタジオさんのほうが大変だったと思います。

キッチンの型を決める際に、今の形のままI型か、II型に変更するのか夫婦の間でお互いの認識がずれていました。夫に何度説明しても、次の打ち合わせのときにその話を忘れられてしまうことが大変でした。

(構成・文 大橋史子)

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    PROFILE

    石井健

    「ブルースタジオ」執行役員
    1969年、福岡県生まれ。「ブルースタジオ」執行役員。日本のリノベーション・シーンの創世期から600件以上を手がけてきた。「カンブリア宮殿」(テレビ東京系)でも「古い物件の家賃を倍にする不動産集団!」として紹介される。「郷さくら美術館」(東京・中目黒)で2012年度グッドデザイン賞受賞。また「賃貸アパート改修さくらアパートメント」(東京・経堂)で2014年度グッドデザイン賞受賞。 著書に『リノベーション物件に住もう』(共同編集/ブルースタジオ)、『MUJI 家について話そう』(部分監修)、『リノベーションでかなえる、自分らしい暮らしとインテリア LIFE in TOKYO』(監修)。
    ブルースタジオへのリノベーションのご相談は、隔月開催のセミナーや、個別相談で承っています。
    http://www.bluestudio.jp/

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