新型コロナウイルスの影響で、春から夏に開業を予定していた札幌市内のホテルが、開業を延期するケースが相次いでいる。インバウンド（訪日外国人客）や出張客の利用が当面、見込めないからだ。国の緊急事態宣言が解除されたことで、飲食店や商業施設が次々と営業を再開する中、観光産業の回復の遅れが浮き彫りになっている。
「開業時期のメドは立っていない」。市営地下鉄大通駅近くで７月に開業予定だった「ベストウェスタンホテルフィーノ札幌」（１４５室）の運営会社の担当者は困惑した様子で語った。
開業延期は、緊急事態宣言延長後の５月１１日に決めた。宣言はその後解除されたが、担当者は「行動自粛は今後も続く。開業時期は、需要の動向を見極めなければならない」と話した。
札幌市中央区で５月３１日に開業予定だった大規模ホテルは５月上旬、８月への開業延期を決めた。食事の提供形式の変更など感染対策を講じる時間が必要との判断だが、担当者は「予約が低調だったという事情もある」と明かした。
開業に備えて人手を確保するため、従業員の半数は休業させて給与を払い続けている。担当者は「８月には需要が回復してほしい」と祈るように言った。
札幌市では、このほか、「ザ・ノット・札幌」（１４０室）が４月２４日から８月１日に開業を延期。「フェアフィールド・バイ・マリオット札幌」（２５４室）は４月２６日に開業したものの、１１日間だけ営業して、５月７日から７月３日までの臨時休業に入った。
札幌市によると、ホテル・旅館の新規営業許可数は、２０１８年度の２４軒から１９年度は５７軒と倍以上に増えた。新幹線の札幌延伸などの商機に加え、１９７２年の冬季五輪の際に建設された施設が建て替え時期を迎えているためという。
今年度の許可数は既に１７軒（５月２６日現在）。相次ぐ開業延期について市の担当者は「感染拡大前に計画し、工事も始めてしまったため、ストップできないホテルが多いのではないか」とみる。既存ホテルも状況は厳しく、営業停止届を提出した施設は、４月に９軒、５月は１０軒に上った。
◆「回復見通せぬ現状 危機的」
北海道大観光学高等研究センターの石黒侑介准教授の話「ホテルは、多大な建設費を数千～数万円の宿泊料で回収するビジネス。一日でも早く開業したいところだが、経費を賄えないほど需要が低下しているほか、スタッフの確保が難航するなどして開業を延期するケースが多いとみられる。札幌市内のホテルは建設ラッシュで供給過剰に陥っており、客足の回復が見通せない現状は危機的だ」
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June 07, 2020 at 09:20AM
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札幌のホテル、開業延期相次ぐ…１１日間だけ営業後に臨時休業も - 読売新聞
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