新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対策のため、いま極力人と接触しないこと、外出が必要な場合にはマスク着用やこまめな手洗いといった対策が厳しく求められている。とはいえ、ひたすら家の中に引きこもっての生活は、経済を停滞させ、大きなストレス要因となる。
筆者は今なにかと話題のフリーランスのライター/カメラマンだが、取材の大半が中止または延期となっているため、外出することもめったになくなってしまった。おかげでマスクやエタノールはほとんど減らないが、さすがに1週間以上も家から出ていないと気が滅入ってくる。もともと筆者は登山が趣味なのだが、さすがに「非常事態宣言」下では、でかけるわけにもいかない。
そこで、家から一歩も出ず、自前の登山道具を使って自宅でキャンプする“家キャン”をやってみることにした。実際のアウトドアフィールドではないものの、部屋の雰囲気が大きく変わることで非日常を演出でき、気分がリフレッシュできるのではないか。また、家族も常にいる現状では、テントはちょっとしたプライベート空間として有効ではないかと考えたからだ。なお、庭でのキャンプはオートキャンプと環境が似ていることから、今回は室内にこだわってキャンプしてみた。
先に結論を書くと、思いのほかキャンプの雰囲気が味わえて、大きな気分転換となった。そこで、実際にやってみたことを写真とともに紹介したい。家にいる時間を楽しむアイデアの一つとして参考にしていただければと思う。
使用したアウトドア用品
・テント
・テーブル/チェア
・シュラフ/マット
・コッヘル/ケトル/シェラカップ/マグカップ/ブキ(スプーンや箸など)
・コンパクトストーブ
使用した日用品など
・カセットコンロ
・フライパン/スキレット(中・小)
・ボール×2/網/桜チップ
・食器(仕切りのあるトレー/皿/マグカップ)
・ライトスタンド/レフ電球型蛍光灯(撮影用品)
・毛布
“家キャン”のメリットは、設備の整ったキッチンで料理を作り、後片付けやゴミの処理も日常通りであること、家庭用電源やWi-Fiがそのまま使えるためアウトドアの不便さがいっさいないことなどがある。トイレも風呂も、暑さも寒さも雨も心配しなくていいし、愛猫を家に残しさなくてすむ。デメリットは、天井があることと場所が狭いこと。キャンプならではの解放感がなく、バーベキューなど火を使う料理はほぼできない。また、炎を使うランタンもできれば避けたほうがいいだろう。
いつもと違う料理で気分を盛り上げる
さて、キャンプの楽しみといえば、家ではできない(やらない)料理だという人も多いだろう。クルマででかけるオートキャンプでは、バーベキューコンロやダッチオーブンなど大掛かりな調理器具を使ってさまざまな料理に挑戦できる。それに対して家キャンでは、薪や炭を燃やす調理はほぼ不可能だ。ただし、電子レンジやIH/ガスコンロ、グリル、トースターなどキッチンの能力をフルに使うことができる。今回は、夕食、朝食と夜に飲むドリンクとしてホットワインを作ってみた。
リラックスタイムにホットワインを
食品のストックのなかに料理用の赤ワインやシナモンスティックがあったので、ホットワインも作ってみた。ホットワインは主にワインにハチミツや香辛料、オレンジなどのフルーツを入れてレンジアップするだけの簡単なもので、基本的には香りや甘さを楽しむ飲み物。酒があまり得意ではない人でも比較的飲みやすく、体も温まるのでキャンプでなくともちょっとした気分転換にオススメしたい。
“家キャン”をやってみて
なかば思いつきでやってみた“家キャン”だが、思いのほかキャンプの雰囲気が出たと思うし、非日常空間を楽しむことができた。
まずテントやテーブルを設置するためにすべての家具を撤去することで、ふだん手が回っていなかったソファ下やすぐに猫毛がダマになるキャットタワー周辺の大掃除もできた。ホコリは菌の温床にもなりやすいので一石二鳥だ。
テントなどのアウトドアグッズは、いつもはフィールドから帰ってくるとそのまま押し入れにしまい込むことが多かったが、今回は土汚れなども拭き落とし、じっくりとメンテすることができた。また、コンパクトストーブのOD缶(ガスカートリッジ)は、フィールドでのガス切れを恐れて登山には新品を持っていくことが多く、中途半端にガスが残ったカートリッジがいくつも手元にあったが、この機会に数本を使い切って処分できた。
部屋のなかのテントは、ペグを打ち込まなくても風の影響を受けず夜露も降りない。床暖房やエアコンも使えるため、フィールドとはまったく違う快適な空間だった。毛布を敷きつめ、封筒型のシュラフを開いて掛布団として使うことで熟睡できたし、日中はPC作業や読書もできるプライベート空間にもなった。我が家には客間はないが、例えば(この騒動が落ち着いたら)友人が泊まりに来た際などにも、リビングにテントを張って就寝スペースとして提供してもいいと思う。また、テーブルだけ出してくるのも使い勝手がよさそうだ。たまには気分を変えてここで料理を食べたり、在宅勤務のデスクとして活用したりできる。実際、本原稿はこのテーブルで書いているが、いつもと違った雰囲気で新鮮だ。
料理は安全のためキッチンで作り、アウトドアテーブルではカセットコンロやコンパクトストーブで温める程度としたが、これだけでもずいぶん非日常感が楽しめた。ただ、いくつかの料理では食材が不足していたことも事実(例えば、はちみつがなかったのでホットワインに砂糖を入れた)である。買い出しの回数は少ないほうがいいので、実際に家キャンを行なう際には数日前から料理を決め、計画的に食材を揃えておきたい。
キャンプ用品は揃えておいて損はない
今回キャンプ用品を使用してあらためて実感したのが、“キャンプ用品は災害時の備えとしても有効”ということである。例えばドーム型の小型テントは家族の目から隠れられる場にもなったが、これは災害時の避難所で着替えや授乳ができるプライベート空間になることを意味する。CB缶(一般的なカセットガスの規格)が使えるカセットコンロやコンパクトストーブとケトルなどがあれば湯も沸かせる。ガスランタンは灯りだが、ちょっとした暖房にもなる。LEDランタンは停電時に活躍する。クッカーは調理にも使えるしそのまま食器として使える。このように、アウトドア用品を購入する際には、キャンプで家族が快適に過ごせることはもちろん、災害時の備えとすることも念頭において選ぶといいと筆者は考える。
この先ひと段落することはあっても、当面完全に解決するものではなく、人類はこれからこのウイルスと折り合いをつけながら生きていくことになる。ともあれ、今年の大型連休は「STAY HOME週間」なので、家の中で最大限工夫して生活を楽しみ、いつかアウトドアフィールドで本当のキャンプができるようになったら、その際はこれらキャンプ道具を持ち出し、今度こそ薪や炭火を使って、大勢で豪快にバーベキューやグリル料理を楽しみたいと思う。
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April 25, 2020 at 06:00AM
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