近年、ノルウェー北部の海岸地域の観光拠点トロムソではホテルの建造が進む。氷河がなくなる前に見ておきたい、オーロラを追いたいという旅行者たちが年々増えているからだ。
新型コロナ感染症の影響で、観光はしばらく休止状態だが、その一方でトロムソのホテルに集まる動物がいる。それが海鳥のミツユビカモメだ。彼らはホテルなどの高い建物を営巣場所に選んでいる。
通常、ミツユビカモメは海を見下ろす崖の上に巣をつくり、内陸に入ることは本来まれだ。しかし、繁殖期となる3月から9月にかけて、ここ数年はその常識が当てはまらなくなりつつある。海の温暖化や、荒天の増加により、本来の生息地でヒナの数が大幅に減った。このため、ミツユビカモメがトロムソをはじめとする北の海岸沿いの街のショッピングセンターやオフィスビルに巣をつくり始めているのである。地元の人たちにとっては迷惑な話で、大きな鳴き声と糞害に悩まされている。 (参考記事:「【動画】カモメの背に乗るカモメ、曲芸的な交尾」)
「鳥たちが巣をつくる崖に何かが起きたために、崖でヒナを育てられないのだと思います。ミツユビカモメが営巣する崖は、今は閑散としていますよ」。トロムソにあるノルウェー自然研究所の海鳥生態学者、トーネ・クリスティン・ライエルトセン氏はこう話す。
ところで、ノルウェー北部の沿岸地域にすむミツユビカモメの数は、1980年代の3分の2にまで減少している。実は、海からこうして都会にカモメが進出することが、生き残る最後の手段なのかもしれないと、ライエルトセン氏は言う。
トロムソ周辺で進められているホテル建造にヒントを得たライエルトセン氏のグループは、北極圏を代表するミツユビカモメを救うための計画を立案した。ミツユビカモメ専用のホテルを建設して、人間に迷惑をかけることなく子育てができるようにしようというのが目的だ。
世界の海鳥は危機に瀕しており、気候変動、魚の乱獲、生息地の喪失など、主に人間が環境に与える影響で、その数を70パーセント近く減らしている。そして、この傾向が顕著なのが北極圏であり、中でもミツユビカモメは大きな打撃を受けている。
かつては、英国北部、フェロー諸島、グリーンランド、アイスランド、ノルウェー(ミツユビカモメの繁殖個体数の半数以上が、これらの地域に生息している)の海辺の崖の上を、何百羽もの群れが渦を巻くように飛ぶミツユビカモメの姿が目撃されていた。しかし、現在ミツユビカモメは、国際自然保護連合(IUCN)のレッドリストの「危急種」に指定されている。このままのペースで減っていけば、ノルウェーのミツユビカモメは40年以内に絶滅してもおかしくないとの研究者の予測もある。 (参考記事:「2018年を「鳥の年」宣言、鳥はなぜ大切なのか?」)
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